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展覧会情報(旧ギャラリーどらーる掲示板より)

2024'05.19.Sun
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2007'01.23.Tue
展覧会案内 投稿者:竜馬@管理人 投稿日:2005/08/05(Fri) 14:25 No.3164  
 

3164.jpg ■「丹野 信吾近作展」
■「丹野 恵子夫選展」

会場:札幌時計台ギャラリー
会期:8月8日~13日


脳梗塞に倒れた恵子夫人を丹野 信吾さんが懸命に介護する生活が4年目に入りました。
そんな中で今年も又個展を開催する丹野さんに対して、敬服と言う以外に言葉がありません。
添付の文章は美術評論家(小樽美術館館長)の吉田 豪介氏の解説です。

今年は、闘病中の恵子夫人を励ます意味も含めて、初個展を「夫選展」という形で同時開催いたします。

どなたかに「愛妻HP」名づけられましたが、まさに愛妻リポーターの竜馬@管理人としては、見過ごせない展覧会です。



展覧会 竜馬@管理人 - 2005/08/09(Tue) 14:21 No.3173  

3173.jpg ◆「丹野 信吾近作展」
◆「丹野 恵子夫選展」
会場:札幌時計台ギャラリー

◆丹野 信吾近作展
私が北海道の美術界と関わる様になったのは、「ギャラリーどらーる」の前身「サロンギャラリーどらある」を創めた時からであり、10年にも満たない年月でしかありません。
丹野 信吾さんはその中でも知り合ったのは最も古く、1996年の今頃であったと思います。
以来、優しくて親切な丹野さんのご好意にすがり続けた9年間でした。
詳しくは記憶しておりませんが、4年ほど前に奥様の恵子夫人が脳梗塞で倒れてしまいました。
電通を退職されてから起業したデザイン会社の社長と画家の二束の草鞋も、会社の経営を他人に委ねて「さてこれからは・・・」という矢先だっただけに、看病に明け暮れる丹野さんの姿にただただ頭が下がる思いでいっぱいでした。
献身的な丹野さんの姿は、私には真似の出来ないことでありました。
そんな中でも毎年、個展・グループ展と精力的に制作されているのは驚異以外に言葉がありません。
今年は、その個展と同時に奥様の水彩画の展覧会も同時に開催するのは大変だったと思います。

丹野 信吾さんは全作品17点(19枚)中4点が今年の新作でした。
作品に関しましては、親友でもある美術評論家の吉田 豪介氏が明快に説明しておりますので、それを引用させて頂きます。

「画面では、きわめて無機的な星の生成や消滅のダイヤグラムが、生命体のように蠕動し、衝突して砕け散り、あるいは力強くうねっている。この墨象のような筆致には、彼の呼吸がのり移り、擦れた墨の濃淡がフォルムの偶発性を保証する。
瞬間な気ままな動きが表現のスタイルを決定しているかのようだ。
それなのに、そこに緻密な計算が、繊細な神経が、隅々まで張りめぐらされているのを確信するのはなぜだろう。
線の角度、形の交差、色の選択。あらゆる要素において、それは揺るぎなく数学的な均衡で張りつめているのだ。
つまり二律背反する偶発性と精密度の危うい平衡こそ、丹野作品の魅力であろう。
今回出品したもう一つの仕事は、ザックリとしたパルプ紙に油彩で描いた、美しい色彩と震えるような形象の星あるいは星雲である。骨太のフォルムがあり、網目になった線画の旋律があり、眼の覚めるような色彩のコントラストとマチエールが、次のタブローの出番を待って試作されているといえる。 」


タイトルが長いので割愛したものも多いのと、全作品を撮影している訳でないことを予めお断りして画像をリンク致します。
「時・空間(Zen)」「時・空間(Zen)3枚組」「超新星残骸(渦)[本年新作]」「おうし座GG星(惑星誕生)[本年新作]」「新旧取混ぜての作品群1」「新旧取混ぜての作品群2」

恵子夫人が病気になる前に、牛乳パック等を溶かしてパルプにし、
作った紙に描いた作品「天体図―蛇。」同様もう1枚も何度も見ても新鮮でした。

◆丹野 恵子夫選展

丹野 恵子さんの作品をこうしてまとめて観たことのある方はそう多くは無いと思います。
恵子さんは1977年から13年間道展に所属されていた水彩画家でしたが、私が知り合った頃には体調を崩されて大きな作品を描いてはおられなかった様に記憶しております。
今回の「夫選展」は、ご覧になって頂ければお分かりの様に実にしっかりした作品が揃っておりました。
根を詰めて書き込んだ作品ばかりで、素晴らしい展覧会でありました。
私が観に行った時には、ご夫妻はまだ会場に到着しておりませんでしたが、後刻「オープニングパーティー」の時に恵子さんに「良い作品でした」と話しましたところ、「お父さんのでしょう?」と言いますので、「いや、恵子ママのだよ」と申しました。
「ありがとう」と、かなりしっかりした口調で握手を求めて来ました。
ここまで、回復させた丹野 信吾さんのご苦労は素晴らしいものですね。
作品を数点ご紹介します。水彩ですのでアクリルでカバーされておりましてバックが写ってしまいましたがご容赦ください。
「早春の藻岩山(雪のモイワ)」「菜の花と絵のある室内」「パンと南瓜のある部屋」「ポスターの置かれた静物」「枯蔓(つる)と南米の置物」「壁の人形たち」「ノートルダム寺院の裏庭」「コキリコと枯向日葵と南蛮」「枯向日葵とホーズキ」「題名不詳」



Re: 展覧会案内 usagicchi改めtoracchi - 2005/08/10(Wed) 07:39 No.3175  

しっかり描き込まれた作品は,HP上でも作品の雰囲気が伝わってくるものですね。「直接見たかったあ」と思う作品に会えました。それにしても,時代は,やはり,夫婦愛でしょうか。(笑)アクリルでカバーってすごいですね。会場と作品が制作された時空間が一体化されてますね。あの例のカメラのなせる技ですか?



丹野 恵子夫選展 竜馬@管理人 - 2005/08/10(Wed) 09:01 No.3176  

3176.jpg usagicchi変じてtoracchiさん、HPでは久しぶりですね。

あっ!兎が虎になったのですか?狐か狸を通り越していきなり“虎”ね~。
やっぱり変人だ(笑)。

>時代は,やはり,夫婦愛でしょうか。(笑)
 ↑
いいえ、時代は“愛”です。(爆)



絵画の鏡像化 栄通(丸島) - 2005/08/10(Wed) 19:25 No.3177  

 作品の中の映像、かえって会場の雰囲気が伝わっているのではないでしょうか。カメラの問題でなく、実際いくつかの作品は強く反射してましたね。作品が大きいだけ、写りやすい一様な暗い背景が広いだけ、映像も迫力ありましたね。『絵の中の絵』というか、何気に後を振り向いたり、逆に作品に食いいったりしました。画家も静物画の背景をそういう想いで描いたんでは、などと思ったりしました。夫氏もその辺はわきまえての展示なのでしょう。

 アクリル板を外せば、作品自体の背景物語がより見えやすいかもしれませんが・・・・・・。



水彩と版画 竜馬@管理人 - 2005/08/10(Wed) 21:54 No.3180  

丸島さん、いよいよ名乗りを上げて来ましたね。
「栄通」があるのだから、「本郷通」、「本通」、「平和通」と続々と白石区の住民が書き込んでくれたら良いと思っていたのですが・・(笑)

水彩作品と版画作品はガラスやアクリルが被せられているのでいつも苦労します。

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2007'01.23.Tue
展覧会案内 投稿者:竜馬@管理人 投稿日:2005/07/31(Sun) 21:50 No.3149  
 

3149.jpg ■「村上 陽一個展」札幌時計台ギャラリー 8月8日~13日

昨年2004年8月に「ギャラリーどらーる」で個展をされた
http://www.doral.co.jp/gallery/kako/2004/08/index.html
帯広市在住の村上 陽一さんの個展のご案内です。

村上 陽一さんからご案内状を含めて頂くお手紙に、いつも「坂本 広雄」となつているのが気になります(ガクッ)。




展覧会 竜馬@管理人 - 2005/08/09(Tue) 11:17 No.3172  

3172.jpg ◆「村上 陽一個展」 札幌時計台ギャラリー

道展会員・二紀会所属の村上 陽一さんの個展を訪れました。
「ギャラリーどらーる」での個展は2~3年前かと思っていたら、丁度1年前の2004年8月の個展でした。

丹野 信吾さんの展覧会を観てからC室の会場に入ったので、一瞬絵のサイズがやたら大きく見えました。
120号位かと思ったのですがS100号で揃えてありました。二紀のサイズ制限に合わせた制作をしているのだと思います。
大きな作品が8点、その他にモノクロームの小品10点ばかりと、舗石の上に彩色した小品「白・花」シリーズが数点(作品1作品2)展示されておりました。

2000年の作品「石の船」が一番古く、次いで2001年の「静祥」、2003年の「石の船」、2004年の「石の船」「月箱」と昨年までに制作した作品が展示されております。
昨年の「ギャラリーどらーる」で飾った作品を全て外して、旧作にしても札幌で発表していない作品で揃えて来た姿勢は評価できますね。

今年制作した大きな絵は3点で、「羽塔」「羽船」の2枚を撮影して来ました。
もう1枚写した積もりだったのですが、駄馬と化した竜馬@管理人忘れたのか旧作の中に入れてしまったのか画像がありません。
小品は、建築物の円錐とか球体を取り出して「建築家の遺産」シリーズとして以前から発表しておりましたが、今回はそれを“版画風”に処理して独自性を出しておりました(作品1作品2作品3)。

会場にこのページでも時折登場する某著名作家が来場しておりまして、『どうしてこんなに茶色をかけているのか?古くて茶褐色に変色した写真でも最近は復元する人が多いし、この茶色を取り除いたらきれいな絵になるのに・・』と、結構しつこく話しかけておりました。
村上 陽一さんの閉口した顔が面白かったです。

2007'01.23.Tue
展覧会案内 投稿者:竜馬@管理人 投稿日:2005/08/01(Mon) 13:47 No.3151  
 

3151.jpg 「絵画の場合展」

会場:浅井学園大学 北方圏学術情報センター ポルト ギャラリー
会期:8月2日(火)~8月14日(日)
□ライブリレードローイング開始 8月2日17:00~
□オープニングパーティー/サウンドライブパフォーマンス 8/2(火)18:30~
□ギャラリートーク1/アートピアプレゼンテーション8/6(土)15:00~
ギャラリートーク2 8月13日(土)15:30~

出品作家
谷口 明志、レスリー・タナヒル、藤田 真理、小林 麻美、
林 亨 、渋谷 俊彦、安藤 文絵、坂東 史樹、斉藤 周 、大井 敏恭

エスキスでの小品展のご案内をしておりましたが、本展のご案内が遅れてしまいました。
関係者の皆様お許しください。

【メディアとしての展覧会/創造行為としての鑑賞】
この展覧会は単なる作品の発表会ではなく、絵画について考えるための「場」であることを志向しています。と案内チラシに書かれてあります。
頭の調子の良くない竜馬@管理人が解説するには難しいところがありますので、皆様ご自身でお読みになってください。



御案内ありがとうございます。 S-Toshi - 2005/08/02(Tue) 00:10 No.3154  

今日は絵画の場合展の搬入、セッティングでした。所要時間11時間。
昨年よりも展覧会、プロジェクト共に充実の内容と自負しております。みなさまのお越しをお待ちしております。

鑑賞者は作品を見て、色々なイメージを持ちます。それは1つの創造行為だと位置づけています。みなさんが抱く様々なイメージをどうぞお聞かせ下さい。



展覧会 竜馬@管理人 - 2005/08/02(Tue) 18:49 No.3159  

3159.jpg ◆「絵画の場合展」速報

もう1時間も経つとオープニングパーティーの開始時間であろうと思います。
出席する積もりでおりましたが、体調が思わしくなく失礼させて頂き、その代わり速報として展覧会風景をいち早くUPさせていただきます。
浅井学園大学 北方圏学術情報センター ポルト ギャラリーの1階とLoft、そして3階を展示場として使用しておりました。
1階は、南1条通りに面したガラスの壁面を使用して 林 亨 さんが、和紙を使用したドローイング作品と、昨年も展示していたプラスチック波板の輪切りを組み合わせた作品を展示しておりました(作品群1作品群2作品群3作品群4)。

又、1階とLoftを使って斉藤 周さんが様々な試みをしております。階段のステップに沿って作品を並べたり、高い柱の一番上に作品を飾ったり床に無造作に重ねて置いてあったりしておりました(2)
壁面も使い(作品1作品2作品3)素晴らしい展示でした。

他には谷口 明志さんが独特の絵を縦横無尽に飾っております(作品1作品2作品3作品4)。

もう一人大井 敏恭さんの作品飾ってありました。大井さんは3階にも油彩作品を展示しておりました。

3階には、藤田 真理さんの「湖花」「こうべを垂れる」の油彩が2点展示されております。
不思議な魅力を持った作品でした。
並んで小林 麻美さんも「ずっと隣にあった家」「外で遊ぶ」の2点の油彩が飾ってありました。
今年のメンバーのなかで唯一傾向が違うかなと感じておりましたが、どうしてどうして見事に雰囲気の揃った作品を出しておりました。若いけれど力のある方ですね。

安藤 文絵さんも最近の展覧会で多く取り上げている石狩の(?)流木を使ったミクストメディアが1点飾られておりましたが、昨年の平面作品の印象が深かったせいか私には少し物足りない気が致しました。
大井 敏恭さんの奥様のレスリー・タナヒルさんも彼女らしい作品を今年も出しておられました。
他には坂東 史樹さんが数点作品をてんじしておりました。ここまで来まして竜馬@管理人くたびれてしまいましたので、作品名を割愛させてください(作品1作品2作品3作品4)。

そしてどん尻に控えしは、この掲示板のアイドル“チチちゃんのパパ”S-Toshiこと渋谷 俊彦さんです。
作品名は「気配-Ⅰ」から「気配-Ⅴ」まで全て「気配」です。
これも何やら仕掛けのありそうな題名ですから、ご本人に述べてもらいましょう。
「気配-Ⅰ」「気配-Ⅱ」「気配-Ⅲ」「気配-Ⅳ」「気配-Ⅴ」
渋谷さんとてもよい色で、きれいでしたよ。



速報ありがとうございます。 S-Toshi - 2005/08/03(Wed) 00:43 No.3161  

具合はいかがでしょうか?
お会いできず、残念でした。わたしはその時何をしていたのでしょう?
スタッフルームでミーティング中だったのでしょうか?
5時からはライブリレードローイングを始めていたのですが・・
また、感想などお聞かせ下さい。
今日はありがとうございました。



ギャラリートーク1 S-Toshi - 2005/08/06(Sat) 21:58 No.3169  

3169.jpg 今日ギャラリートーク1が無事終了致しました。
展覧会の2本柱の1つ、「アートピア構想」のトレー企画の実施報告と、アートピア構想の概略が説明されました。
来週のギャラリートーク2は展示作品を通して「現代美術の中の絵画の模索」を主テーマに穂積利明氏(三岸好太郎美術館主任学芸員)の司会進行で作家との討論が予定されております。



Re: 展覧会案内 竜馬@管理人 - 2005/08/07(Sun) 11:14 No.3170  

予定を書き込んだ時は「行こう!」と思っていたのですが・・。
出勤だったので、くたびれてしまった。

今日あたりもう一度行こうかな。

2007'01.23.Tue
展覧会案内 投稿者:竜馬@管理人 投稿日:2005/08/05(Fri) 17:57 No.3165  
 

3165.jpg ■「第三回 爽光会展」 日本橋三越本店美術特選画廊

会期:8月16日(火)~22日(月)

日展を構成している「光風会」の新鋭会員・会友選抜展が日本橋の三越本店本館で行われて3年目になります。

添付画像に記載されている18名が選抜されておりますが、光風会会員・道展会員の西田 陽二さんが第1回から連続選抜されております。

私も第一回から拝見しておりましたので、メンバーの会員さんの作品と名前が一致する方が増えて参りました。
西田 陽二さんは当然ですが、同じ姓の西田 伸一さんや、福田あさ子さんの作品を楽しみにしております。

今年も行けるかどうかは、例年と事情が違いますので未定ですが行けることを願っております。

2007'01.23.Tue
輪郭の消滅、印象の爆発 投稿者:久保AB-ST元宏 投稿日:2005/07/30(Sat) 09:17 No.3140   HomePage
 

夏だ。
古今東西、夏になれば人々は、海や山に行くらしい。
その理由は「そこに海や山があるから。」であるのだから、「そこにパチンコ屋があるから。」と言う人にとっては、パチンコ屋は現代の海や山なのだろう。
そう言えば、最近、『海物語』というパチスロの機種があるらしい・が。

海も山も、人々を惹きつける存在でありながら、同時に(=だからこそ)、それぞれ畏怖すべき巨大な神秘を抱えた存在である。
その両者を「自然」とくくって満足する手もあるが、それぞれの畏怖はまったく違う種類のはずである。
例えて言うのであれば、海の放つ畏怖の根拠は、その絶え間ない「変化」であろう。
また、山のそれは、遅延化された「変化」が先回りして待っているという予感が準備する不安から生れる。
つまり、「変化」という情報が、受け手の許容力より過激に早いのが海であり、過激に遅いのが山である。
そして、早くても、遅くても受け手は畏怖を感じることになるのだ。
それが「非日常」ということであり、そこにレジャーの価値も生じている。

画家にも、海彦と山彦がいるのかもしれない。
単純に、「海を見て育った画家」、「山を見て育った画家」という分類でも、それなりに作風の差異が楽しめる。
また、「海を描く画家」、「山を描く画家」には、その素材が画法に大きく影響している様を今まで私たちは数限りなく見てきたはずだ。

海彦と山彦を左右に持つ巨大なシンメトリーの中間に位置する、丁度いい「変化」が描かれているのが「自画像」なのかもしれない。
「海を描く画家」は、その早い「変化」を手に入れようと、ストロークの工夫を試みる。
「山を描く画家」は、その遅い「変化」を定着させようと、粘着性のある色の実験を繰り返す


では末永正子は、海彦か?山彦か?

そのポップなラインが演出する浮遊感、
カラフルな奥行きが提示する幸福感。

彼女の絵には、カラフルな絵が陥りやすい田舎臭さや、バカっぽさが無い。
その秘密は、原色から数歩ズレた色を探し当てることによって、
都会的で洗練された知的な空間を築くことに成功したからだ。



風・HANA・女 2003年 F120






『二人の風景』1998年★末永正子は、長年出品していた道展で、1998年、一躍出品作が注目を集めて協会賞を受けた。その翌年に新会友、次いで会友賞、会友賞と2回続き、そしてまた翌02年に会員となった画家である。このような軌跡で歩を進めた画家は、道展でもめずらしい。
二人の風景 1998年 F130 
道展協会賞








『女と花』 2000年 S100
女と花 2000年 S100 道展会友賞









『青い印象』 2005年 F50
青い印象 2005年 F50

私は彼女の絵を初めて見た時に、1968年に公開されたザ・ビートルズの
アニメ映画『イエロー・サブマリン』で使われた、楽天的な色と線を連想した。
1972年に札幌大谷短期大学油彩専攻科を卒業した彼女にとって、
この映画が提示した色彩感覚は、青春という第二次原風景(?)を形成する
ものであったのかもしれない。
しかしそうとは言っても、37年前の映画である。
両者に共通点を見つけてみたところで、無意味である。
ただ、楽天的な色と線が特権的に持つ魅力を、つまみ出すことは可能だ。
それは、徹底した非日常のみが提示できる、新しい経験であろう。
丸っこく原色のアニメ・キャラクターは、デフォルメの産物である。
末永の描く世界も、日常を昇華してゆくデフォルメの作業があったはずだ。
だから末永の作品は37年後のサイケではなく、彼女の必然なのである。

それでは、末永はこのスタイルを在学当時から続けていたのかと思えば、どうやらそうではないようだ。今回の個展は過去8年間の作品を観ることができるが、わずか8年前の作品が、まったく違ったスタイルで描かれていたことが確認できる。

道展協会賞の「二人の風景」(1998年、F130)は、近年の彼女の作品のキーワードであるポップ、カラフル、サイケ、おしゃれ、浮遊感、幸福感などとはまったく逆の作風である。
ただこの時期と現在の作風の相違を列挙する中で、とても興味深い発見ができる。

たとえば、現在の作風の中では脇役のように感じられる無彩色が、ここでは全面に渡って使われている。
さらに、この時代の白、灰色が現在の作風にまで引き続き使われ、同時に品を与える重要な役割をしていることに気が付かされる。
たとえば、「ピンクと灰色」、「水色と白」、これらの組み合わせが、「ピンクと水色」の組み合わせだけでは失ってしまうものをたくみに引き寄せているのだ。

この時期の、もう一方の特徴は、対象を徹底して「面」でとらえようとする姿勢である。
それは鉛筆デッサンの初期の訓練の延長かもしれないが、
面の重層が輪郭を浮かび上げる大きく手前で、あえて立ち止まって、独特の効果を現していたり、その一方で、人物に降り注ぐ光すらをも、「面」としてとらえる画家特有の過剰さがすでに現れている。
ここに見られるキュービズムは純文学的な高みを示しつつはあるが、まだ物足りない。
それは作者も気がついていたであろう。その証拠が点在するピンクや水色なのだ。

このわずか2年後に末永は、無彩色とビビッド・カラーのバランスを逆転させる。
2000年の「女と花」は私の好きな絵であるが、
この絵に登場する「女」は、まるで空間から切り抜かれたあとの空白のように描かれている。
「面」への関心を過剰に推し進める中で「輪郭」を持て余していた末永が、「面」を空白にすることによって「輪郭」を獲得したという逆転劇は感動的ですらある。
別の言い方をすれば、描かないことによって、初めて魅力的な「輪郭」を獲得したのだ。

それでも私に不満が言える余裕があるのであれば、ここで空白の「女」を浮かびあげたのが
「花」であるという選択である。
「花」とは、ある意味、かなり抽象的かつ特権的な存在である。
抽象的かつ特権的な存在を、抽象的かつ特権的に描いても限界があるのだ。
私は彼女の技法でこそ、リアルな日常の周辺を描いてもらいたい。
彼女の絵自体が「花」なのであるから、もはや「花」を描く必要はない。

だから、当然のことながら「卓上」(2005年、F10)や「風景」(2005年、F10)は、かなり魅力的だ。
それは、我われが知っている世界を、別の世界に変えてくれるからなのだ。


末永の変遷は、正しい。と、確信させてくれるのが「青い印象」(2005年、F5)だ。
おそらく彼女は「面」を愛しすぎたのであろう。
彼女に愛され選ばれた「面」は、つきっぱなしのストロボのように爆発し、輪郭をぶっ飛ばした。
強烈な光を獲得した「面」は、この世から輪郭を消滅させたのだ。
輪郭の消滅は、私に国境の消滅を連想させ、「青い印象」の前に再び立った時には、
この絵は、全ての地域が魅力的に光り輝いた時に国境が無くなった世界地図に見えてきた。

我われは現実世界においても、輪郭などは見てはいなかったのである。
輪郭が消滅した彼岸に、再び新しい世紀の印象派の日の出が今度は爆発しながら昇ってきたのだ。

そして主張する「面」は輪郭という境界が無くとも、対立せずに、見事なハーモニーを生み出した。
その時に重要な役割を果たしたのが先に触れた、ニュートラルな無彩色だ。
では、これらはのどかな雲なのだろうか?
いや、これは砕け散りながら融合と離散を繰り返す、絶え間ない「変化」としての「面」なのだ。
たとえるならば、海の波と、泡しぶき。のどかさからは、はるかにかけ離れたスピード感がそこにある。
ついに末永は「面」によって、ストロークを描いた。末永は、ずっと、海を見ていたのだ。



明日で会期も終わり 竜馬@管理人 - 2005/07/30(Sat) 21:03 No.3143  

何とか会期中に間に合ってよかった。

今日は一応出勤を致しましたが、午前中は眼科を訪れて脳神経外科での診断を報告しておりました。


連日の夜高行灯作りと、その後延々と続く飲み会をこなしながら評論です。
少しこじつけがきつ過ぎましたがテンポが良いので『アレッ。そうなのか』と思ってしまう。
私の「末永 正子観」が狂ってしまった(ガクッ)。



Re: 輪郭の消滅、印象の爆発 びっくりする人 - 2005/07/30(Sat) 21:07 No.3144  

久保さん短文ですね?
文面完結してますか?
完結させたのでしょうか?
見に行けない私には物足りないです!



シィーッ! 竜馬@管理人 - 2005/07/30(Sat) 21:16 No.3145  

レテなべさん!けしかけちゃだめですよ。
十分に長文ですよ。



Re: 輪郭の消滅、印象の爆発 竜馬@管理人 - 2005/08/02(Tue) 11:49 No.3155  

3155.jpg 昨日、中野 邦昭展オープニングパーティーで吉田 豪介先生と話している中で、久保さんのこの評論の話になりました。

「新聞記者なんかがあの文章を書くのはまずいと思うけれど、久保さんの立場ではなんら問題ないし、切り口というか作品に迫る視点が、美術関係者の思いつかないところから迫っていてとても面白いと思った。末永 正子がこれを読んだら喜ぶと思うよ」と話しておられました。

レテナベさんには理解できないかも知れませんが、北海道のトップの美術評論家が誉める評論みたいですよ。



長文の消滅、短文の爆発 久保AB-ST元宏@絶望 - 2005/08/02(Tue) 15:17 No.3157   HomePage

3157.jpg >見に行けない私には物足りないです!

■絵画を「見る」と同時に、「読む」能力&趣味のある、大阪在住のエルなべブルトン男爵にとっては、オリジナルの絵を観る特権に関しては不可能でも、評論は住む場所が離れていてもオリジナルが体験できますものね。

>新聞記者なんかがあの文章を書くのはまずい

■一応、『共犯新聞』記者なんですけど。がくっ。

>久保さんの立場ではなんら問題ない

■最近は、家庭内で「立場」が無い情況に追いやられそうなんですが。がくっ。
■先日、お肌の手入れにマジック・ペンを買いに行ったらしい岩松希望@社長賞立候補者さまが私の書いた感想文に画像とリンクを貼っていただく手間をかけていただき、ありがたく思っております。
その結果、下記の2つの画像を開いて比べてみると、なかなか面白い「面」の愉楽が楽しめますねぇ~♪
こーゆー楽しみは、オリジナルの画廊から離れた、こーゆーバーチャル画廊ならではの、オリジナルな楽しみ&発見ですね。
●末永正子「青い印象」2005年 → http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/4d002fdbbd229f81211208dc408d5cc5/1169520601
●モネ「印象・日の出」1874年 → http://art.pro.tok2.com/M/Monet/mo01.jpg



Re: 輪郭の消滅、印象の爆発 竜馬@管理人 - 2005/08/02(Tue) 17:08 No.3158  

先ほど末永 正子が挨拶に見えまして、1時間ばかり話をしておりました。
「奇怪文字サイン」の久保さんが、どらーるのHPに何やら書いていたと言う事は生徒さんから聞いていたそうです。
『難しくて分からなかったけれど末永 正子は海女なのか?』という内容だったと聞かされていたそうです(ガクッ)。
早速当社岩松希望@社長賞立候補者がプリントアウトしてご当人にお渡しいたしました。
『4点の添付画像を選択したことに感激しておりました。女と「花 2000年 S100 道展会友賞」は、自分の制作人生の基点となった作品で、これでこの先も絵を描いて行く自信が付いた作品である。
「青い印象 2005年 F50」の完成で、ギャラリーどらーるに絵を飾る勇気が出た作品である。
「風・HANA・女 2003年 F120」で、会員としての立場を自ら納得した契機となった作品である』とのことでした。

『何もお話していないのにどうして絵を見ただけで、私の制作人生のエポックを感じ取れたのでしょう?』と不思議がっておりました。
もう1点、「原色に近く、けれど原色から少しずれた色を使う」という意味のことが指摘されていた。まさしく彼女のこだわりの1点を久保さんが読み取ったことにも驚いておりました。
今、その文章を探してところすでに修正されたのか無くなっております(ガクッ)。



視力の消滅、資力の爆発 久保AB-ST元宏@願望 - 2005/08/03(Wed) 00:31 No.3160   HomePage

3160.jpg >探してところ

■いつに無く、誤字&脱字の多い竜馬氏のレスを読むにつけ、視力を心配しつつ、なれない筆をとりました。がくっ。

>「原色に近く、けれど原色から少しずれた色を使う」という意味のことが指摘

■それは、下記のくだりですね。

彼女の絵には、カラフルな絵が陥りやすい田舎臭さや、バカっぽさが無い。
その秘密は、原色から数歩ズレた色を探し当てることによって、
都会的で洗練された知的な空間を築くことに成功したからだ。

■同じ意味でも、私は美しい言葉を選ばせていただいております(がくっ)。
なぜならば、美しい絵に近づくには、それに見合う「投機資本」か、もしくは、それに見合う美しい「言葉」を与えることの二つに一つしか、絵を観る我われに許されてはいないからなのです(なんちゃって)。

>『何もお話していないのにどうして絵を見ただけで、私の制作人生のエポックを感じ取れたのでしょう?』

■それは&もちろん、私の力ではなくて、末永画伯の絵の力ですよね。

>奇怪文字サイン

■確か、最近の個展で『坂本順子 展』というのがありましたが、その報告記事が樺戸郡以北で流通している『北空知新聞』に掲載されたことがありました。その記事を書いた記者が、沼田町のALTの記事も書いていました。記事の最後の稀少苗字サインでわかりましたが、記事を締めくくる数行は「新聞記者なんかがあの文章を書くのはまずい」と思えるぐらい素晴らしいので、いつものように無断転載させていただきます。



Re: 輪郭の消滅、印象の爆発 竜馬@管理人 - 2005/08/03(Wed) 09:56 No.3162  

>■それは、下記のくだりですね。

彼女の絵には、カラフルな絵が陥りやすい田舎臭さや、バカっぽさが無い。
その秘密は、原色から数歩ズレた色を探し当てることによって、
都会的で洗練された知的な空間を築くことに成功したからだ。

あれっ?その件りは消えていなかった?
やはり視力が落ちていると見落とすのですねガックリです。
末永 正子は「彼女の絵には、カラフルな絵が陥りやすい田舎臭さや、バカっぽさが無い。」をとても喜んでおりました。
バカっぽいのは彼女本人なんです(ガクッ)。

・ALT問題→がんばってますね。都会人の竜馬@管理人には「外国人教師の導入による外国語・異文化交流」と言われても切実な問題に思えないし、大体行政や教育委員会に何らかの期待をする幻想を抱かないので、久保さんたちの行動が子供っぽくも見えるし、逆に新鮮でもあります。
一宿一飯の義理がありますので、もし町との出入りがある場合には助っ人として駆けつけますよ。

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